怒声飛び交うゲーム賭博店の緊迫手入れ(産経新聞)

 夜のネオンがきらめく横浜市中区の繁華街の一角。神奈川県警生活保安課と伊勢佐木署が内偵捜査を進め、雑居ビル4階にポーカーゲーム機賭博店の存在をつかんだ。摘発を逃れるため、店名を示す看板などはなく、監視カメラや複数の鍵を付けるなど、あの手この手を使って警戒する店側。これに対し、取り締まりの手をゆるめない警察側。息詰まる神経戦の末、捜査員が賭博店を急襲した緊迫の「手入れ」の一部始終を目撃した。(大渡美咲)

 ■バールでこじ開け急襲

 「警察です。開けてください」

 今月6日午後10時過ぎ、横浜市中区の繁華街・福富町の雑居ビル4階にある店舗前。県警の捜査員約10人が、監視カメラのついた木製の扉の前でノックしながら何度も呼びかける。扉には以前あった店名とみられる「PUB姫」の看板がそのまま掲げられていた。

 店からの応答はなく、いらだつ捜査員。監視カメラに向けて捜索令状を見せながら、「警察だ開けろ!」と大きな声で叫んだ。らちがあかないと判断した捜査員は、あらかじめ用意していたバールで扉をこじ開け始めた。

 「いいか開けるぞ!」「開けるぞ!」

 2カ所付けられた鍵をバールを使って力ずくで壊しにかかると、ガンガンという大きな音が狭い廊下に響きわたる。

 数分たち、捜査員が2つ目の鍵を壊そうとした直後、観念したのか店側が扉を開けた。捜査員が雪崩を打って店内に突入。

 「(午後10時)21分入り!」「5千円賭博事実あり!」。捜査員の叫ぶような声が店内で飛び交う。客や店員には動かないように素早い指示が出された。

 ■客に僧侶も

 あぜんとする客と従業員に対し、捜査員は手際よく捜索を進める。店内は70平方メートルほどで、鏡張りになっている。窓などはないが逃げるためとみられる非常口があった。

 入り口に付けていた監視カメラとつながっているとみられるモニターも見つかった。その横で従業員の佐藤正彰容疑者(44)はうなだれていた。もう1人の従業員、藤枝久子容疑者(49)も、はじめは否認するようなことを言っていたものの、しばらくして容疑を認め、ぶぜんとした表情で椅子に座っていた。

 店内にはポーカーゲーム機が9台あった。ゲーム機の画面では、「GOODLUCK」という文字が点滅していた。その前で苦笑いする客の男性が2人。後で取材して驚いた。1人はなんと僧侶(63)だった。もう1人は無職の男性(79)で、2人とも次の日に釈放されたが、僧侶は「時間があったので来た。好きだからやっている」。男性の方は「年金暮らしだが、賭博が大好きでやってきた」と話したという。僧侶はお布施で賭博をしていたのだろうか、あきれてしまった。

 佐藤容疑者は「悪いと知りながら、職もなかったのでやった」などと供述。1日の売り上げは「20万円くらい」と話し、客の中には1日で25万円負けた人もいたという。

 捜査員は店内を丹念に調べ、ゲーム機と現金などを押収し、運び出した。捜索が終了したのは翌日の午前1時ごろだった。

 ■2000円が100万円に

 県警によると、摘発された店は昨年12月に開店したばかりで、経営が軌道に乗る前の摘発だった。24時間営業で、1日あたり多くて10人ぐらいの客が訪れていたという。1回に最高2千円を賭けることができ、最も倍率の高いロイヤルストレートフラッシュが出ると、500倍で100万円をもうけることも可能だったという。

 店に名前はなかった。一見客は入れず、鍵を二重にかけ、客の出入りを監視カメラでチェックするという警戒ぶりだった。

 県警の摘発を逃れるため、この店と同様に、届け出をせず店名も掲げない賭博店が増えており、「アンダーグラウンド化」が進んでいるという。以前は、風営法で定められた「遊技場営業」のゲームセンターなどとして許可を受けた店が、裏で賭博をやっているというケースがほとんどだった。店名を掲げないのは集客には不利だが、警察の摘発が進んで店側が警戒を強めているための影響とみられるという。

 捜査関係者は「店の存在自体を隠しているため、店を探すことから捜査が始まる。大変だ」とため息をつく。

 ■いたちごっこ

 県警には、さまざまな情報が入ってくる。「変な声がする」「人の出入りがおかしい」「賭博をやっていると聞いた」…。うそか本当か分からないような情報を手がかりに、実態把握を進めていく。捜査は人の出入りや店の周辺のチェックなどから始まる。

 店側も神経をとがらせ、異変を感知するため、ビルの外に人を立たせたりして警戒は怠らないという。捜査関係者は「手探りの状態からスタートすることが多い。何よりも警察が動いているということを店側に察知されないようにすることが一番大変」と内情を話す。店側の警戒で事前に客を装って店に入るのはかなり難しいという。客や出入りしている人からの情報を積み重ね、最終的には摘発の日時を決めるのだ。

 うまく準備が進み、摘発となっても、客がいなければ常習賭博罪は成り立たない。厳重な鍵を壊している間に、非常階段から逃げたり、金を隠されたり…と証拠隠滅を図る店もある。捜査関係者は「突入のタイミングが難しい」と漏らす。摘発にはかなりの労力と神経を使うのだ。

 捜査関係者は「摘発しても、ほとぼとりが冷めるとまた同じような店が出てくる。いたちごっごの部分もある」と話す。

 ■主流はパチスロとカジノ

 県警によると、一昔前の喫茶店などに置かれたゲーム機全盛時代、賭博の世界で流行したポーカーゲーム機店だが、最近は少なくなっている。パチスロのほか、バカラやブラックジャック、ルーレットがあるカジノが主流になっている。

 捜査関係者は「ポーカーは地味で華やかさがないからではないか」と話す。10年ほど前に取り締まりが強化され、店が減ったことも廃れていった原因とみられる。

 一方で客を集める「闇パチスロ店」。勝ち負けが大きいギャンブル性の高い「4号機」と呼ばれる機種を置く。この機種にのめり込み借金を重ねた上の犯罪が相次ぎ問題化し、平成19年7月までに一般のパチスロ店から撤去された。若い人を中心に人気が高く、機械が余っていることもあり、裏で流通したという。

 ポーカーゲーム機賭博は客と店が金を賭ける「常習賭博罪」に当たる。カジノや丁半賭博などは客同士が金を賭け合う「賭博開帳図利罪」に当たり、店は一定の手数料「寺銭」を徴収する営業方法を取る。店としては後者の方が、安定した収入を得ることができるという。

 「ポーカーをする人は金と時間に余裕のある高齢者が多い。根強いファンやマニアがいる」と捜査員。今回摘発されたのも60歳以上だった。パチスロ店で摘発されるのは30〜40歳代が多いという。 

 県警幹部は「客がいるから店もなくならない。摘発は続けていかなくてはならない」。賭博の根深い実態を吐露した。

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